── 静かな冬の町で起きた、小さな奇跡の話
こんにちは、ユキです。
今回はちょっと趣向を変えて、短い物語をお届けします。
心が少し疲れたとき、何も考えずに読めて、終わったあとにほんのり温かさが残るようなお話。
そんな時間になればいいなと思っています。
雪の朝に届いた手紙
その朝、町は静かだった。
夜のうちに降った雪が、すべての音を包み込んでしまったかのように。
凛と冷えた空気の中、ひとりの老人が郵便受けに手を伸ばした。
指先は手袋越しでもかじかんでいて、動作は少しぎこちない。
けれど、取り出した一通の手紙を見たとき、彼の手はぴたりと止まった。
差出人は、10年前に亡くなった娘の名前だった。
「…また、誰かの悪戯かな」
小さくそうつぶやいて、リビングのストーブの前で封を切った。
便箋は薄く、すこし古びている。文字は、たしかに娘のものだった。
「お父さんへ
この手紙が届くころ、私はもういないんだと思う。
でも、きっとお父さんは雪の日もちゃんとポストを見に行くと思って。
だからこの日付に手紙を託します。
それまで毎日、ちゃんと生きてくれるって信じてるから。
ありがとう、お父さん。大好きでした。」
彼は何度も読み返した。
文字がにじんで見えなくなるたび、そっと目をぬぐってから、また読み直した。
10年前──病室で、娘は確かにそんなことを言っていた気がする。
「雪の朝って好きだったなあ」
「もし死んじゃっても、お父さんにお手紙出したいな」って。
けれど、それはたしか冗談半分だった。
それとも、本当に託していたのだろうか。誰かに、どこかに。
どちらでも、もうどうでもよかった。
手紙は間違いなく、娘から届いたのだ。
10年越しに、雪の朝に。

終わりに
手紙には「魔法」があると思います。
書いた人の気持ちが、時間や距離を超えて届くことがある。
それがどれだけ小さな奇跡でも、
受け取った人にとっては、人生を少しだけ前に進める力になることもあるんです。
この物語が、誰かの心にそっと残ってくれたなら、うれしいです。
また別の短い物語も、いつか届けさせてくださいね。
ユキでした。❄️