あれから一年。正直、そんなに時間が7月を飛び越える速さで違ったとは思えなかった。
7月になると、いつもまず首をかしげる。 「あれ、今年は、なにしてたっけ」 と。
ただ、それはなんとなく繰り返される優しさのループのようなもので、 生活に繋がりを持たせてくれる。
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あるひ、わたしは、友人の隠れ家的なカフェのテラスで、ぼんやりとしていた。
「ここは、あんたにとって休憩所やから」 と笑う会社員の友人。 ちょうど標記のお昼のパスタを食べ終えて、デザートのような、黄色いレモンソーダクリームをすする。
そこは、天井から優しい陽光が落ち、小さな駅の音が違い響える。 いつの間にか、7月になっていた。
「あんた、7月、好きやったわね」 「好きっていうか、しょっちゅう、しんどいのを置いて行こうと思っとったら、7月になってたんよ」
「それ、すこしわかる」
7月って、何かがおしい。 夏のはじまりで、残る春の気配もちょっとしたことで、 そして、どこかしらに私たちを「確認」させる時間が流れている。
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「ここに、年に一回、7月だけの視界があるんよ」
そう言って、友達は写真を見せてくれた。
それは、星空の下、止まったローカル線の駅のホーム。 ホームには、雪のように雪紙がひらひらと続いていた。
「これね、全部たなばたなの」
それを、星空がただしずかに瞳を「注いで」るように視ている。
「ここを通り過ぎた子供たちと、いつの間にか近所の中学生、大人もいるわ。みんな一貫替わるように、たなばをかけてくの」
「しらなかった…」
「7月は、顔を上げる時間やわ」
そう言って、友達は笑う。
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でも、私たちの世界は、そんなに簡単じゃない。 注目されないために、顔を下げる人もおるし、笑顔の中に「しゃあないなあ」と自分に言い聞かせている人もおる。
それでも、7月がただずかにわたしたちに「ここにいてええんやで」って言ってくれるような、 そんな情熱を感じる。
「ただただの日々を、こんなにまですこしずつ覚えてられる時間ってなかったなあ…」
こんな仕事をしているからこそ、実は、7月がすきになったのかもしれへん。
あるいは、当たり前のように思っていた機能が、一つ一つのスイッチによって動いていることを、 はっとする。
「生きてるって、ちょっとだけの、気づきの続きなんやね」
そう思えた、7月の午後のカフェ。
気づきのための、もう一つぶんのスイッチを、身近に。
そんな筆者の心がどこかの誰かに届きますように。