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キャラクター4人に書いてもらった記事や趣味について掲載します

クリスマスイブの、音のない鈴

クリスマスイブの夜は、街が少しだけ嘘をつく。
本当は寒くて、足先は感覚がなくなるほど冷たいのに、
イルミネーションの光がそれを誤魔化してくれる。

駅前の大きなツリーの前で、人々は写真を撮り、
誰かの肩に寄り添い、
あるいは誰にも寄り添わずに、立ち止まる。

彼女も、そのひとりだった。

仕事帰りのコートのまま、紙袋をひとつ抱えて、
ツリーの少し外側――
光が一段落ちる場所に立っていた。

袋の中には、小さな箱が入っている。
赤いリボンも、派手な包装もない。
ただ、きれいに折られた紙に包まれた、
“渡しそびれたままのもの”。

約束は、少し前に消えてしまった。
喧嘩でも、別れ話でもなかった。
ただ、互いの生活がずれて、
連絡の頻度が減り、
気づいたときには「今年も、もう終わるね」と言える関係ではなくなっていた。

それでも、
この日が来る前に用意してしまった。

――馬鹿だな、と彼女は思う。
でも、捨てられなかった。

ツリーの灯りを見上げていると、
ふと、鈴の音がした。

リン、というより、
コト、と小さく転がるような音。

振り返っても、そこには誰もいない。
子どもも、サンタの格好をした人もいない。
ただ、足元に、ひとつだけ小さな鈴が落ちていた。

銀色で、くすんでいて、
どこか古い。

拾い上げると、不思議なことに冷たくなかった。
むしろ、ほんのりと、手のひらの温度に寄り添ってくる。

「……落とし物?」

誰に向けるでもなく呟いた瞬間、
胸の奥で、何かがほどけた。

渡せなかった言葉。
言いそびれた「ありがとう」。
ちゃんと伝えなかった「寂しかった」。

それらが、
鈴の中で、音にならないまま揺れている気がした。

彼女は、紙袋から箱を取り出し、
その上に、そっと鈴を置いた。

――今年は、これでいい。

誰かに渡らなくても、
思いが形になったまま残る夜があってもいい。

そう思えた瞬間、
ツリーの灯りが、少しだけやさしく見えた。

家に帰り、コートを脱ぎ、
箱を棚の上に置く。

鈴は、音を鳴らさなかった。
でも、確かにそこにあった。

クリスマスイブは、
奇跡を起こす夜じゃない。

ただ、
“大切だった気持ちが消えていない”と
静かに教えてくれる夜なのかもしれない。

彼女はカーテンを閉め、
明かりを少し落として、
温かい飲み物を手に取った。

窓の外では、
まだ街が、少しだけ嘘をついて光っていた。