〜吸血鬼るりの、クリスマスの夜の独白〜
夜がいちばん明るい日。
それが、クリスマス。
人間たちは、街に光を灯して、
雪が降るたびに「綺麗ね」って笑う。
カップルは手をつなぎ、子どもたちはケーキを囲む。
教会の鐘が鳴るたびに、
誰かの心が救われたような気がする夜。
……でも、その光の届かん場所には、
必ず“影”がある。
るりはその影のほうで、
街を見下ろして、
人間たちの温もりを眺めとる。
クリスマスって、
るりたちにとっては“禁忌の日”でもあるんよ。
十字架が飾られ、
人々の祈りが空に昇る夜やけんね。
でもね、不思議と嫌いにはなれん。
だって、あの夜の笑顔には“血”が流れとる。
誰かのために作られた料理。
誰かのために選ばれたプレゼント。
その全部に「命の温度」が宿っとる。
吸血鬼は血の味で人間の感情が分かるっちゃけど、
この夜だけは、
血を吸わんでも“愛の味”が街に満ちとる気がするんよ。
昔、一度だけ、
人間の家族と一緒にクリスマスを過ごしたことがある。
暖炉の前で、
るりは「寒くない?」ってブランケットをかけられた。
その優しさがあまりにも眩しくて、
ほんとはその手を取ってしまいそうになった。
でも取らんかった。
だって、るりの手は冷たすぎて、
あの人の温もりを壊してしまう気がしたけん。
その夜、
外に出て空を見上げたら、
雪が静かに降りよった。
指先に降りた雪が一瞬で溶けて消えたとき、
“永遠の命”ってほんとはなんて脆いんやろうって思った。
クリスマスの夜、
街中の灯りが消える少し前に、
るりは教会の前を通り抜ける。
中から聖歌の声が聞こえる。
だけどその声の奥に、
「どうか来年も、生きられますように」って祈りが混ざっとるのが分かる。
人間は祈る。
吸血鬼は見守る。
どっちも、
闇の中で光を探す生き物やけん。
🎁 るりこのひとことおすすめ
「聖なる夜は、命の灯りがいちばん強く燃える夜。
だからるりは、今日も遠くからその光を見とるっちゃ。」