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キャラクター4人に書いてもらった記事や趣味について掲載します

帰り道が、少しだけ長くなる理由

 ホワイトデーの帰り道。

 いつもと同じ通学路なのに、
 なぜか今日は、景色が少し違って見えた。

「……なんか、あったかいね」

 彼女がそう言って、マフラーを少し緩める。

「そうだな。昼よりマシかも」

 会話は、いつも通り。
 でも、どこか少しだけ、ぎこちない。

 沈黙が落ちる。

 前なら、誰かがすぐに話題を探していた。
 でも今は、そのまま歩けてしまう。

 足音が、ふたり分並ぶ。

 それだけで、十分な気がした。

 さっきのことを思い出す。

 箱を渡したときの、彼女の顔。
 少し驚いて、でも嬉しそうで、
 それを隠そうとして、結局隠せていなかった表情。

「……さ」

 彼が口を開く。

「うん?」

「中身、ちゃんとしたやつだから」

「え?」

「その……店で、結構悩んだし」

 言ってから、少し後悔する。

 なんでそんなこと言ったんだろう。

 彼女は一瞬きょとんとしてから、
 ふっと笑った。

「そっか」

 それだけなのに、
 胸の奥がじんわり熱くなる。

 交差点の信号が赤になる。

 並んで立つ。

 少しだけ距離が近い。

 肩と肩が、触れそうで触れない。

 視線の置き場に困って、
 ふたりとも前を見る。

「……今日さ」

 彼女が、小さく言う。

「うん」

「なんか、変な感じ」

 彼は少しだけ笑った。

「分かる」

 言葉にすると、少し楽になる。

 でも、それ以上は言わない。

 青に変わる。

 また歩き出す。

 別れ道が近づく。

 いつもなら、何も考えずに「じゃあね」と言う場所。

 でも今日は、少しだけ足取りが遅くなる。

 理由は、どちらも分かっている。

 でも、言葉にはしない。

「……ここだね」

 彼女が言う。

「ああ」

 ほんの一瞬の間。

 風が吹いて、彼女の髪が揺れる。

 夕方の光が、少しだけやわらかい。

 彼は、ふと思う。

 あの日、
 彼女が勇気を出したこと。

 今日、
 自分が少しだけ応えたこと。

 それで終わりじゃない。

 ここからが、たぶん始まりだ。

「……あのさ」

 気づけば、声が出ていた。

 彼女が顔を上げる。

「明日、さ」

 一瞬、言葉を選ぶ。

 でも、やめない。

「帰り、時間ある?」

 彼女の目が、少しだけ大きくなる。

 それから、ゆっくりと笑った。

「あるよ」

 その答えを聞いた瞬間、
 胸の奥で何かがほどける。

「そっか」

「うん」

 それだけのやり取りなのに、
 今日一日で一番、心が動いた気がした。

「じゃあ、また明日」

「また明日」

 手を振って、別れる。

 でも、振り返らない。

 振り返ったら、たぶん全部バレるから。

 少し歩いてから、
 彼女はそっとスマホを取り出す。

 新しいメッセージを開く。

 ——明日、楽しみ

 送るか迷って、
 一度閉じる。

 それから、少しだけ考えて、

 ——ありがとね、今日

 そう送った。

 数秒後。

 スマホが震える。

 ——こっちこそ

 短い一言。

 でも、それだけでいい。

 帰り道は、もう別々なのに、
 さっきより少しだけ近い気がした。

 たぶん、明日は。

 もう少しだけ、隣が自然になる。